2022年08月05日

税務・会計用語集

クラウド会計ソフトの概要

Ⅰ クラウド会計ソフトとは

会計ソフトとは、簿記のルールに基づいて会社で行われる取引の一つ一つを記録し、貸借対照表や損益計算書といった会計帳簿を作成できるソフトウェアのことを指します。
会社は年に一度は必ず税金の申告を行う必要があり、その申告を行うときには会計帳簿も併せて作成し提出しなければならないことから、事業を行う上では会計ソフトは無くてはならないものと言えます。自社では保有していなくても、その会社が税務顧問を依頼している会計事務所は会計ソフトを保有しているので、そちらで会計帳簿が作られています。

従来、会計ソフトで作成したデータは、記録媒体を会計事務所内や自社内のサーバーで保管していました。これに対してクラウド会計ソフトのデータの保管場所はその会計ソフトを提供するベンダーや外部が保有するサーバー、つまりクラウド上にあることから、自社でデータを保管する必要がありません。
自社でデータを保管する場合はそのサーバーを守るための物理的なセキュリティ対策等が必要だったり、テレワークや外出先ではデータが確認できない等、場所による業務への制約がありましたが、クラウド会計ソフトであればそういった制約はなく、インターネット環境があればどこでも会計データの確認が可能です。

Ⅱ クラウド会計を導入したほうが良いか

データの保管場所がクラウド上となる以外にも、クラウド会計ソフトには既存の会計ソフトとは異なる特徴があります。会社によってはクラウド会計ソフトを導入するよりもクラウドではない既存の会計ソフトを利用した方が良い可能性もあるので、クラウド会計ソフトを導入する場合は様々な観点からするメリットとデメリットを比較検討する必要があります。

1.API連携


ソフトウェアやアプリケーション、プログラム同士をつなぐ概念をAPI(Application Programming Interface)と言い、APIを通じてソフトウェアやアプリケーション、プログラムを繋げることをAPI連携と言います。
クラウド会計ソフトの代表的な機能として、そのクラウド会計ソフトに対応している銀行口座をAPI連携することで通帳の入出金記録を自動的に会計ソフトに取り込むことができ、これまで手作業で行っていた「数字を打ち込む」という動作を省くことができます。
このAPI連携ができるのは通帳だけではなく、クレジットカードの支払い明細、
ネットショップの購入記録、POSレジの売上金額等々、
クラウド会計ソフトごとに対応している「API連携できるもの」と連携を行えば、会計データの作成に必要な数値を自動的に取り込んでくれます。

人力で行っていた経理業務にかかる時間を短縮することができるのは、クラウド会計ソフトを導入する代表的なメリットです。取引量が多い程効果を実感できるので、会計帳簿の作成を円滑に行うことができます。
逆に言えば、銀行やクレジットカードがAPI連携に対応していなかったり、API連携できるものの入出金頻度が低く取引数が少ない等、元々手入力でもほとんど手間がかかっていないような場合には、API連携のメリットはさほど感じられないかもしれません。

2.記帳代行を依頼しているか


会計事務所が記帳代行業務を行っている場合、会計データの作成は会計事務所内で行われることから税務顧問を依頼する会社側では会計ソフト自体を用意する必要がありません。
そうなると、会社側ではクラウド会計ソフトを導入しようがしまいがあまり恩恵を感じられない可能性があります。ただ、クラウド会計ソフトはタイムリーな財務情報を閲覧できるうえ、クラウド会計ソフトによっては請求書の作成機能など、会計ソフト以外の機能を兼ねるものもあるため、一概にメリットが無いとは言えません。

記帳代行業務自体は多くの会計事務所で行われていますが、会社で経理業務を行うためのリソースが割けないこともその理由の一つです。
その場合は自社で会計ソフトを導入することによって効率化が図られ、これまで行えなかった経理業務を自社内で行うことができるようになる可能性もあります。

また、自社で会計ソフトを保有していないということは、昨今の感染症の蔓延の影響を受けたときなど不測の事態が生じたときは、税務申告の期限までに会計データを作成できなくなるといったリスクもあります。
そのような場合に備えクラウド会計ソフトを導入し、会社側でも会計事務所側でも会計データを編集できる状態にし、不測の事態に備えておくこともリスク軽減の一つの方法です。

3.導入コスト


クラウド会計ソフトは基本的に月額のサブスクリプション形式、あるいはその12か月分の利用料を年間一括で支払うことが多いですが、ダウンロードして使うことができる会計ソフトは一度購入すると後から利用料を支払わずとも使い続けることができます。導入経費を意識するのであればダウンロード版の会計ソフトを使用した方が良いかもしれません。

とはいえ、近年法改正が頻繁に行われることから、ダウンロード版の会計ソフトでも数年に1回は買換えやライセンスの更新料の支払い等を行わなければそのような改正に対応した会計データを作成できない場合もあり、またクラウド会計ソフトのベンダーも機能を制限した廉価版のプランを用意しているところもあることから、一概にコスト面で有利とはいえません。

4.顧問税理士のクラウド会計ソフトに対する理解


これはクラウド会計ソフトに限った話ではありませんが、使用する会計ソフトを指定し、それ以外の会計ソフトでは税務顧問を請けないという会計事務所もあるので、クラウド会計ソフトを利用していても対応してくれる会計事務所に税務顧問を依頼する必要があります。

インターネットで検索すると、クラウド会計ソフトに対応していることをアピールする会計事務所もあり、クラウド会計ソフトのベンダーから、そのクラウド会計ソフトを使いこなせる認定を付与されていることを自社の売りにしている会計事務所もよく見受けられます。
自らクラウド会計に強いことをアピールしている会計事務所であれば、そのクラウド会計ソフトの強みを生かした効率的な業務フローを提案してくれる可能性があり、自分では気づかなかった経理業務設計ができる可能性があります。

しかし、クラウド会計ソフトに強くても、既存のクラウドでない会計ソフトに強いとは限りません。クラウドとそうでないものの双方の強み、弱みを把握している方が、より具体的なアドバイスを得ることができる可能性があり、一概に「クラウド会計ソフトに強い事務所だから一番効率的な業務フローを知っている」とは言えません。

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