2023年06月08日

年末調整

源泉徴収制度について

Ⅰ 源泉徴収制度の意義

所得税は、納税者自身がその年の所得金額と税額を計算の上、自主的に申告して納付する「申告納税制度」が建前とされています。
一方、特定の所得については、支払者がその支払いを行う時に所得税を徴収して納付する「源泉徴収制度」が採用されています。
この制度は、納税者側の税金の支払い漏れ・国側の徴収漏れを防止する目的で採用されていますが、納税者側と国側それぞれに対して以下のようなメリットもあります。

◆納税者側
1.所得を得る毎に源泉徴収がされていれば、確定申告で一時に多額の納税をしなくて済むため、資金計画が立てやすい
2.サラリーマン(給与所得者)の場合、年末調整を行っていれば、多くの場合で確定申告手続きが不要

◆国側
1.通常、源泉所得税の支払いは毎月行うこととしているため、一時のみでなく年間を通じて安定的な税収が得られる
2.サラリーマン(給与所得者)の場合、一人一人から申告をしてもらうよりも会社に納税義務を負わせて徴税した方が、手続きの簡素化と事務コスト削減ができる。

Ⅱ 源泉徴収義務者

Ⅰの通り、源泉徴収をされる者は納税者自身となりますが、この源泉徴収した所得税を納付する義務を負う者は支払を行う会社等になります。
会社や協同組合だけでなく、一定の場合には学校や官公庁、個人や人格のない社団等も源泉徴収義務者となります。
つまり、徴収税額に漏れがあったときに責任や罰則が与えられる者も、支払を受けた側ではなく支払を行った源泉徴収義務者となります。
不足税額について、従業員や取引先から後日回収するかどうかは、源泉徴収義務者の判断に委ねられます。
しかし、この対応は後々トラブルになるリスクもあるため、支払時に源泉徴収が必要かどうかは事前に確認しておくことが望ましいといえます。

Ⅲ 源泉徴収が必要な場合とは

会社等の経理実務上、源泉徴収が必要なケースは以下のようなものが考えられます。
1.役員や従業員に給与・賞与、退職金を支払う場合(現物支給を含む)
2.居住者に対し、一定の報酬・料金を支払う場合(弁護士や税理士への士業報酬、フリーランスへの原稿料や講演料、プロスポーツ選手や芸能人への出演料など)
3.株主に配当金を支払う場合(法人の合併・分割や解散、自己株式の取得等によるみなし配当を含む)
4.非居住者に対し、一定の対価を支払う場合

また、実務上源泉徴収をする側になることは考えにくいですが、以下も源泉徴収の対象になります。
こちらは、受け取る側で考えた方が馴染み深いかもしれません。
5.年金受給者に公的年金を支払う場合
6.保険業法に規定する生命保険会社等が、保険契約に基づいて個人年金等を支払う場合
7.公社債や預貯金の利子、投資信託の収益分配金を支払う場合(一般事業会社が受け取る貸付金利子は、税法上の利子所得に該当しないため、源泉徴収をしない)
8.金融商品取引業者等が、特定口座を通じて行われた特定口座内保管上場株式等の譲渡等により生じた差益を支払う場合

Ⅳ 留意点

上記Ⅲでは、源泉徴収が必要な場合の一部について取り上げましたが、こちらに記載がないものについても源泉徴収をしなければならない場合があります。
源泉徴収義務があるかどうかについては、帳簿上使用される勘定科目や名義ではなく、支払の性質毎に判断しなければいけません。
(たとえば、委託先や外注先から交通機関等の領収書を受け取って精算を求められたとき、単純な精算取引でなく外注費の一部と考えることが適切な場合もあります。この場合は、精算分についても源泉徴収を要します。)

また、支払を受ける者がどのような立場かによっても、必要な事務手続きが異なります。
例えば、2.は相手先が法人である場合には源泉徴収をしない、4.は支払を受ける者の国内における恒久的施設の有無、所得の帰属先次第で課税範囲とその方法が異なるなどが挙げられます。
不要な源泉徴収をしない、相手先が租税条約の締結国である場合は、一定の要件を満たしたうえで軽減税率や免税の措置を受けるなど、
適正納税をすると同時に税金は納めすぎず、手元により多くのお金を残しておくことも、事業を継続する上で必要なことの1つであるといえます。

源泉徴収事務には納期限に関する特例措置が設けられていますが、この特例の対象となる源泉所得税の範囲は限られています。
期限に遅れて申告納税すると、不納付加算税や延滞税が課される場合もあるため、この点においても注意が必要です。

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