2024年05月22日

遺言

ペットに相続は出来るか

Ⅰ ペットへの相続

飼い主にもしものことがあった際、ペットに財産を相続させることはできるのでしょうか。
ペットの法的解釈と併せて、以下で解説します。

Ⅱ 相続の意義とペットの法的解釈等

相続とは、ある人が死亡した場合に、その故人が持っていた全ての財産・権利義務を一定の身分関係にある人が受け継ぐことをいいます。
ペットは民法上「動産」にあたり、法人格を持たない(=個人又は法人のいずれでもない)ことから、所有権などの権利の主体になることができません。
よって、ペットが飼い主と「一定の身分関係にある人」になることはできず、たとえ遺言があっても飼い主から直接財産等を相続することはできません。
また、これらの理由からペットそのものは相続財産となりますが、ペットは売買実例価額により財産評価を行うこととされるため、一般的には年齢に比例して評価額も下がり、よほど高値で取引される品種でない限りは財産価値がありません。

Ⅲ ペットのために財産を残す方法

飼い主がペットに直接財産を残すことはできませんが、ペットのために財産を残し、有事に備えることはできます。
具体的には、飼い主が信頼する法人格をもつ者(=個人又は法人)に、ペットの飼育を義務付けることを条件に、その者へ対し飼育に必要な財産を相続させる方法があります。
飼い主の生前、当事者同士でこれらの契約を交わしていたことにより生じたものは「負担付死因贈与」、故人(飼い主)の意志のみで遺言により相続させるものを「負担付遺贈」といいます。
税務上はいずれの場合であっても、受け取った財産は相続財産として取り扱います。

Ⅳ 負担付死因贈与と負担付遺贈のメリット・デメリット

負担付死因贈与のメリットとデメリットは、次のようなものが考えられます。
◆メリット :原則として契約の撤回は出来ないため、飼い主の死後、ペットの飼育者がいなくなる懸念を解消できます。
◆デメリット:契約の撤回が出来ないことから、財産の受け渡しは確実に行われますが、義務の履行については不確実性が残ります。

また、負担付遺贈のメリットとデメリットは、次のようなものが考えられます。
◆メリット :相手方の同意を要件としないため、飼い主の遺言のみでペットの飼育者を選べます。
◆デメリット:同意を要件としない手軽さがある一方、相手方が放棄の意思表示をした場合は、ペットの飼育者がいなくなります。

Ⅴ ペット信託の活用

負担付死因贈与と負担付遺贈の他に、第三の選択肢としてペット信託を活用する方法もあります。
上記で財産を受け継ぐ人=義務を履行する人であったところを、ペット信託では「財産を受け継ぐ(=信託される)人」「義務を履行する人」の2つの立場に切り離し、
「財産を受け継ぐ人」は義務を履行する人への飼育費の支払い、「義務を履行する人」はペットの飼育をそれぞれ行います。
この2者間で行われる飼育費の送受金は、故人(飼い主)が生前に預入をした信託専用口座の資金を原資に行われます。
つまり、信託専用口座に保管された財産の使い道は限定されており、飼い主がペットのために遺した財産は本来の目的に確実に使われるものと考えられます。
また、その確実性をさらに高めるため、「信託監督人(2者がそれぞれ支払・飼育を行っているかどうかを監督する第三者)」を設定することもできます。

よって、ペット信託のメリットとデメリットは、次のようなものが考えられます。
◆メリット :他の契約等と比べ、飼い主の遺志が確実に尊重されます。また税務上、信託専用口座に預入されたお金は相続財産にならず、相続税も課税されません。
◆デメリット:相談や書類作成のための士業報酬がかかります。また信託監督人を定める場合には、信託報酬もかかります。

Ⅵ まとめ

飼い主の健康状態や経済事情に合わせた備えが出来ることは、市場に多くの商品サービスが出回るようになった現代ならではの恩恵と考えます。
一緒に暮らす家族が人であってもペットであっても、万が一の事態に備えておくことは大切なことではないでしょうか。

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