2025年11月18日

事業承継

【親族外(従業員等)承継】とは

親族外(従業員等)承継とは、親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法です。
オーナーが株式を保有したまま社長の座を譲るケースや、将来的な親族への承継までの“つなぎ”として従業員に一時的に承継するケースもあります
後継者候補としては、共同創業者、経営者の右腕を担ってきた役員、優秀な若手経営陣など、さまざまな人材が考えられます。

【メリット】
◆会社をよく知る人に承継できる
社風や現場をよく知っている人に承継するため、スムーズな事業承継が期待できます。
◆経営者としての資質・適性を見極めることができる
これまでの会社に対する貢献、働きぶりから後継者としての適性を判断することができます。
◆従業員や取引先から受け入れられやすい
普段から接している人材であるため、周囲の信頼を得やすく、経営を安定させやすい点も大きな強みです。

【注意点・デメリット】
◆適任者がいないおそれがある
後継者となる社員には、経営への強い意思に加え、資金面・債務保証のリスクを負う覚悟も求められます。
その両面が求められるために、適任者が見つかりにくい側面があります。
◆株式取得等の資金力問題
経営権=株式のため、後継者が安定して経営できるようにするためには、総議決権の過半数の株式を保有することが目安となります。そのため、贈与または譲渡によって、その時点の株主(オーナーまたはオーナー経営者など)から後継者に株式を引き継ぐことが一般的です。
ただし、後継者に株式を引き継ぐ際、後継者は株式を買い取る資金を用意する必要があるため、資金不足が問題になることもあります。株式を無償で引き継ぐこともできますが、贈与税の納付が必要となる場合があります。
◆個人債務保証の引き継ぎ
借入金の個人保証を後継者が引き継ぐのが一般的です。
リスクへの理解や説明が、後継者や後継者の家族に対して必要となります。

親族外(従業員等)承継で経営を引き継ぐ方法には、大きく分けて次の3つがあります。

1. 経営権のみ譲渡する(株式は渡さない)
株式はそのままに経営権のみ譲渡し、経営者としての役割だけを引き継ぐ方法です。
定款に従って株主総会や取締役会を開催、後継者を新しい代表取締役に選出して、変更登記を行うだけで手続きは完了します。

この場合、株式を引き継がないため、後継者に金銭的負担がかかることはありません。
一方で、所有と経営の分離という問題が残ります。経営権のみ引き継ぐと、株式を持つ前経営者が会社のオーナーのままで、後継者は雇われ経営者という立場になります。
最終的な意思決定権を持つのはオーナーである前経営者です。
このような状態だと、後継者は前経営者の意向に沿った経営しかできず、たとえ必要だと思っても大胆な方向転換や改革をしにくくなります。
また、従業員も後継者と前経営者のどちらに従えばいいのか迷ってしまう他、前経営者が亡くなった場合、株式の相続が問題になる可能性もあります。

2. 株式を有償で譲渡する(株式を渡す)
後継者が株式を購入して会社の所有権と経営権を引き継ぐ方法です。

◆後継者1人に株式を売却する場合
必要な株式を買い取る資金を後継者1人で準備しなくてはなりません。
資金が足りない場合、経営者と後継者の双方で合意すれば後継者は分割払いで株式を買い取ることができます。
後継者はまとまった金額を用意する必要がなくなるため、金銭的負担の軽減が可能です。
また、後継者が金融機関などから融資を受けることや、会社が自己株式の取得を行うなど、後継者の負担を軽減するための対策が必要です。

◆従業員持株会など複数人に株式を売却する場合
株式の一部を従業員持株会に売却し、残りは後継者に移譲するという方法です。
この方法を利用する場合は、経営者が保有する株式の一部を、普通株よりも配当を優先して受ける権利がある一方で議決権には制限がある「優先株」に転換します。
その優先株を従業員持株会の会員に売却することで、経営権を保つのに必要な議決権割合を確保しつつ、後継者に引き継ぐ株式数を減らすことが可能です。
なお、従業員持株会による株式の保有は、株式が社外へ流出することを防げたり、社員の財産形成に役立ったりするメリットもあります。

3. 無償で譲渡する(株式を渡す)
経営者が後継者に株式を無償で譲渡する方法です。
この場合、現経営者は対価を得ることができません。また、経営者に配偶者や子供などの法定相続人がおり、経営者の財産の大半が株式であるような場合は、必要な株式を贈与すると親族の遺留分を侵害してしまい、揉め事に発展する可能性があります。

※遺留分とは、配偶者や子供など被相続人と近しい関係の方に法律で最低限保証されている遺産の取得分のことです。

弊社では、事業承継の方法・タイミングについての助言や、それにともなう贈与、相続、譲渡に関わる自社株評価、資金面や事業承継税制等の適用といった税務面でのサポートのご相談を承っております。
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