2022年07月21日

確定申告

103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁

Ⅰ これらの「壁」は、所得税あるいは社会保険料の負担が、ご本人に対して発生するかどうかを考える際、その境の目安となっている金額です。

「夫が会社勤務で主に家計の収入を担い、妻がパート勤務で家計を補助している」というケースで考えてみます。この場合、多くのケースで「妻が夫の扶養に入っている」状態になっていると思われます。この場合の「扶養」は、夫の所得税を計算する際と、社会保険料の負担者は誰になるのかに関係します。また、「扶養」に入る要件は、所得税と社会保険でそれぞれ設けられています。
「扶養」に入る条件を満たしている場合、夫の所得税を計算する際は妻の「扶養控除」が使えて夫の所得税が減り、妻は社会保険料を負担する必要はありません。

Ⅱ 「『103万円』の壁」とは?

所得税は、「収入-必要経費=所得」を計算し、この「所得」にかかる税金です。
給与所得者にとっての必要経費にあたる部分が、「給与控除額」と呼ばれるものです。この金額は、法律で定められています。その最低額が、『55万円』です。(給与額によって、この控除金額は変わっていきます。)そして、所得税を計算する際、誰もが収入から差し引ける金額があります。これを「基礎控除額」といいます。こちらの金額が、『48万円』です。

《 基礎控除額:48万円 + 給与控除額:55万円 = 103万円 》

つまり、給与としての収入が103万円を超えなければ、所得税をかけるべき金額が「0(ゼロ)円」となり、「所得税がかからない」ということになります。

所得税を払わずに済む給与収入額、その最低金額が「103万円」――これが、「『103万円』の壁」と呼ばれています。

妻は夫の扶養を外れることなく、所得税がかからず、社会保険料を負担せず、給与を受け取ることができます。夫の所得税計算の際には、夫自身の「基礎控除」48万円のほかに、妻を扶養としていることによる「配偶者控除」38万円(その年の12月31日現在の年齢が70歳以上である場合は48万円)を所得から差し引くことができますので、夫の所得税も減ることになります。

また、夫の会社が「配偶者手当」を支給している場合にも、注意が必要です。手当の支給対象を「税制上の控除対象配偶者(年収103万円以下)」と規定していることがあるからです。配偶者手当の支給がある会社にお勤めの場合は、勤務先の会社の『配偶者手当の支給条件』を、よくご確認下さい。

Ⅲ 「『130万円』の壁」とは?

次に『130万円』の壁」。こちらは、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入する義務が生じる金額です。夫の会社が社会保険に加入している場合、当然夫の毎月の給与からは社会保険料が徴収され、社会保険に加入しています。妻の収入が130万円未満であれば、夫の社会保険の「被扶養者」となり、妻本人に保険料の負担は生じません。つまり、妻は社会保険の保険料の負担をしなくても、健康保険に加入でき、将来的に老齢年金を受け取ることができるのです。では、妻に130万円以上の収入がある場合は、どうなるのか。

社会保険の被扶養者要件のひとつが年収130万円未満ですので、まず夫の社会保険の被扶養者から外れます。妻本人には新たに社会保険料の負担が生じ、夫の方の社会保険料の負担はそのままとになります。妻の収入が103万円を超えた場合の夫の所得税計算に際しては、「扶養控除」に代えて「配偶者特別控除」(妻の収入がが201万6千円まで、そのほかにも要件があります)が設けられていす。
こちらにつきましては、ここでの説明を省略させて頂きます。

妻が所得税を払っていたとしても、社会保険に自らが保険料負担者として加入せずに済む金額が「130万円」――これが、「『130万円』の壁」となります。

Ⅳ 「『106万円』の壁」とは?

法律が改正され、平成28年10月1日より「短時間労働者に対する社会保険料適用対象の範囲が拡大」されました。以前より、所得税を払わないために年収を103万円に抑える、または所得税を払っても社会保険料を負担しないために年収を130万円に抑えるという働き方を調整する方がパート主婦に多いことから、女性の積極的な就労を妨げるとの指摘がされてきました。そこで、働かない方が有利になるような仕組みを除く目的で行われたのがこの改正です。

勤め先との雇用関係が常用的使用関係(常に雇用され、雇用期間に定めがない等)である場合、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ職場で同様の仕事をしている一般社員のおおむね4分の3以上である方が対象でした。

この改正では、以上の条件に満たない場合であっても、社会保険の被保険者となる場合があります。
次の5つの条件をすべて満たす人です。

1.週の所定労働時間が20時間以上であること
2.勤務期間が1年以上(※1)見込まれること
3.賃金の月額が8.8万円以上であること
4.学生でないこと
5.従業員数が常時501(※2人)以上の企業に勤めていること

※1 現在1年から2カ月に改正されています。
※2 2022年10月に501人から101人へ、2024年10月に101人から51人へ引き下げられます。

では、3を年収に計算してみます。

《 月額賃金8.8万円 × 12か月 = 105.6万円 》

端数を切り上げますと、年収「106万円」―これが、「『106万円』の壁」と呼ばれるものです。

妻が社会保険に自らが保険料負担者として加入せずに済む金額――前述の「130万円」の前に、

「106万円」という金額ができたのです。

条件を満たし、妻自らが社会保険に加入する場合、給与額が変わらないと仮定すると、給与総額から所得税を引き、社会保険料も引かれますので、手取り額が減ります。また、妻が社会保険に加入するので、夫の社会保険の被扶養者から外れます。

さらに、夫の所得税は「『130万円』の壁」同様、妻の「扶養控除」が外れ、「配偶者特別控除」で計算するため、所得税額が増えることとなります。

Ⅴ さいごに

「結局、どんな働き方が一番得なの?」――皆様が一番知りたいことは、ここでしょう。
この法改正の行方、ご家庭の事情、ご本人やご家族の考え方等々、置かれている状況は千差万別、刻々と変化します。個々の状況によっては、一番いいと思った方法を選択できない場合もあるでしょう。
法律が改正され、新たに「『106万円』の壁」を意識する機会ができました。
ご自身やご家族の今後の働き方を含めた将来のことを、改めて考える機会としてはいかがでしょうか。

また、厚生労働省は、社会保険加入のメリットを3つ挙げています。

1.将来もらえる年金が増える
2.障害がある状態になり日常生活を送ることが困難になった場合なども、より多くの年金がもらえる
3.医療保険(健康保険)の給付が充実する

これも、個々の事情によっては一律で当てはまらない場合もあるとは思いますが、ご参考になさってください。

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