2023年09月12日

退職金

退職金の法的性格(裁判事例を鑑みて)

飲酒運転により懲戒免職となった教員に対する退職金を巡る訴訟において、最高裁は退職金の支給を認めないとする判決を下した。 長年勤めた末に退職金が支給されないということはその後の生活を考える上でも大きな痛手であるが、飲酒運転という罪の重さからいうと当然の判決とも受け止められる。 そもそも退職金の法的性格はどのようなものか、今一度考察してみようと思う。

Ⅰ退職金の法的性格

1.賃金後払い的性格

退職金は通常、退職金規定に基づいて算定基礎賃金に勤続年数別支給率を乗じて算定されるため、後払い的性格と位置づけられる。

2.功労報償的性格

退職金は通常、勤続年数が増えるにつれ上昇すること、自己都合退職よりも会社都合退職の方が支給率が高いこと、懲戒解雇の場合に不支給がありうるため、功労報償的性格と位置づけられる。

3. 生活保障的性格

退職金が、労働者の失業中、退職後の生活を保障する側面があるため、生活保障的性格と位置づけられる。

Ⅱ退職金不支給判決の考察

賃金後払い的性格をもつ退職金について、その全額を不支給と判断するに至った背景には、当事者のそれまでの功績を失わせるほどの背信行為があったと 認められたためであり、今回の飲酒運転はまさにその背信行為に値するもので、教育に携わる者として責任が強く問われた結果と考えられる。 一方で、過去の判決では、当事者の行為が会社と直接関係のないものであることから背信行為とまでは言えず、不信行為として本来支給されるべき退職金の一部に相当する額の支給 が認められた事例もある。公平性の観点からこれらの裁判事例の比較を取り上げるコラムも多々見受けられるが、まずは退職金の法的性格を理解したうえで「必ず支給されるもの」という考えは拭い去る必要があるかもしれない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/170/092170_hanrei.pdf

退職手当支給制限処分取消請求 事件

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