2022年12月23日

確定申告

医師・歯科医師の概算経費特例

医師又は歯科医師は、社会保険診療報酬が年5,000万円以下の年分について、「概算経費率」による所得計算を行うことができます。概算経費とは、その名の通り、実際にどれだけの経費がかかったかではなく、おおよその金額で経費を算出する方法です。今回は個人に適用される措置法26条について解説しますが、法人であっても一定の要件を満たした場合は、措置法26条と同趣旨である租税特別措置法第67条の適用が可能です。

Ⅰ 要件

次に掲げる1から4までの要件をすべて満たす必要があります。

1.医業又は歯科医業を営む個人であること
2.社会保険診療報酬が5,000万円以下であること
3.事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7,000万円以下であること
  ※社会保険診療収入が5,000万円以下でも、自由診療も含めた収入が7,000万円以上ある場合は、概算経費での計算は認められない。
4.確定申告書に措置法26条を適用して所得金額を計算した旨の記載があること
  ※実務では、「令和 年分収支内訳書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》」又は「令和 年分所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》」を確定申告書に添付することにより、当該記載があることとして取り扱われます。

なお、措置法26条は青色申告の特典には該当しないため、いわゆる白色申告者であっても適用することが可能です。

Ⅱ 概算経費額の速算表

社会保険診療報酬           概算経費額の速算式
2,500万円以下              社会保険診療報酬×72%
2,500万円超3,000万円以下       社会保険診療報酬×70%+50万円
3,000万円超4,000万円以下       社会保険診療報酬×62%+290万円
4,000万円超5,000万円以下       社会保険診療報酬×57%+490万円

Ⅲ 有利不利判定

社会保険診療収入に対応する概算経費は、一定率に基づいて計算されるため、実額経費が概算経費として計算するよりも多い場合は、実額経費として計上したほうが有利です。

特に医療法人などは、役員報酬なども考慮に入れると、概算経費が実額経費を上回ることはほとんどあり得ません。他にも賃貸料が高額な都心部などに診療所を持っている方や、従業員を多く雇っている方なども、実額経費が多くかかっている場合があります。

加えて、自由診療がメインの場合も注意が必要です。概算経費はあくまでも、社会保険診療に対応している医療経費が対象となるため、それ以外の経費は、実額によらなければなりません。社会保険診療と自由診療の経費の区分は明確にしておく必要があります。

自由診療収入がある場合は、必要経費を社会保険診療と自由診療のそれぞれにかかる固有経費と、共通経費とに分けて、さらに共通経費は按分して所得計算をします。従って全体の収入に占める社会保険診療収入の割合や、それにかかる固有経費の額によって、有利不利の関係が変動するので、個別に判断しなければなりません。

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