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2024年07月17日
消費税の確定申告
外国法人の消費税の納税義務
はじめに
外国法人が日本国内で法人税の課税の対象となる取引を行えば、当然法人税が課税されることとなりますが、
たとえばAmazonや楽天市場などのECサイトを通じて外国法人が日本国内で物販を行うなど、
一見日本国内で行われていても法人税の課税の対象にならない場合もあります。
ただし、法人税が課税されずとも、消費税は課税の対象となることもあるので、
ECサイトを運営する外国法人は意図せず消費税の申告が漏れていた可能性があることに留意しなければなりません。
消費税の納税義務について、外国法人の場合はどのように扱われるのか確認していきましょう。
Ⅰ恒久的施設とは
消費税の納税義務の前に、外国法人に法人税が課税されるのがどのような場合なの確認していきましょう。
国税庁のHPでも、日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象になるものと説明されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm
出典:国税庁HP「No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)」
上記URLの中でも出てくる言葉として、「恒久的施設」という文言がありますが、
この恒久的施設(PE)についても国税庁に説明があります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2883.htm
出典:国税庁HP「No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」
国際税務について造詣の深い方であれば「PEなければ課税なし」という言葉は聞いたことがあると思いますが、
その言葉の通り、国内にPEがあるから外国法人でも法人税を課税されることとなるのです。
Ⅱ消費税の課税対象
一方消費税は法人税とは課税のルールが異なるため、
PEがあろうがなかろうが課税されることがあります。
原則的には、前々事業年度の課税売上高が1,000万円超の場合には、
その事業年度は消費税の納税義務が生じることとなりますが、
この1,000万円の課税売上高の金額に含めるべき取引に該当するか否かの要件として、下記の4要件があります。
1.国内において行うもの(国内取引)であること。
2.事業者が事業として行うものであること。
3.対価を得て行うものであること。
4.資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること。
ここで法人税の課税要件と比較すると、
法人税は場所、もの、人、いずれの形でも国内に「PE」があればそれが課税対象となるのに対し、
消費税は上記の要件を満たす「取引」の金額が1,000万円超となると課税対象となります。
もし外国法人で日本国内にPEが無くとも、
上記の要件を満たせば消費税の申告を行い、税額が発生すれば納付を行わなければなりません。
Ⅲ外国法人が消費税の納税義務を負う具体例
もし外国法人が消費税の納税義務があるにもかかわらず消費税の申告、納付を行っていなかった場合、
延滞税や意図的に納税を行わなかったとみなされて各種加算税を支払わなければならないこともあります。
意図せずに消費税の納税義務が発生していた具体例として、
外国法人がECサイトで商品を販売し、外国から物品を日本国内で輸入して販売するにあたって、
日本国内の物流企業などが提供するフルフィルメントサービスを利用している場合です。
フルフィルメントサービスとは、このサービスを利用する事業者が商品をサービスの提供会社へ発送した後は、
在庫の管理、ECサイトでの商品購入の受注、梱包、出荷、返品対応まで、
発送後のすべての業務を代行してくれるサービスです。
先程の消費税の課税取引となる4要件に該当するか、フルフィルメントサービスを利用している場合に当てはめてみると、
1.国内に保管されている在庫を国内の消費者に販売しているので、国内取引
2.外国法人というだけであって、事業者が事業として行っている
3.対価を得て販売している
4.商品を販売しているので、資産を譲渡している
いずれの要件も満たすこととなってしまいます。
たとえば非課税物品を販売しているなど、必ずしもフルフィルメントサービスを利用している外国法人のすべてに消費税が課税されるという訳ではありませんが、
日本国内にPEがなくとも、少なくとも1,000万円を超える売り上げを2年以上続けていれば、
消費税の納税義務が生じてしまうこととなります。
おわりに
国税局によると、インボイス制度が始まったのを契機に、数千社にも及ぶ外国法人がインボイスの登録事業者になる届出を行っているとのことです。
これまでは海外の会社であるがゆえに、納税義務の有無が把握しきれていなかったり、
あるいは納税義務があっても海外なので日本の税務当局は手を出せなかったりするパターンもあったかもしれませんが、
今後外国法人に対する課税についても強化されていく可能性があります。
意図せず税金の申告納付が漏れている可能性がある会社は、納税義務があるか否かを慎重に確認していきましょう。